
医療材料の在庫管理や発注業務は、医療スタッフの業務負担を増やしているケースも少なくありません。こうした課題に対する解決策として注目されているのは、病院内で医療材料の消耗品を一元管理する方法であるSPDです。
本記事では、SPDの概念と仕組みを解説し、自院内運用と外部サービス利用それぞれのメリット・デメリット、業務範囲、SPDに求められる能力までご紹介します。
SPD(Supply Processing and Distribution)は、供給(Supply)、加工(Processing)、流通(Distribution)の3工程を一元管理することで、医療材料の消耗品を適切にコントロールする手法を指します。
病院が使用する医療材料や医薬品の在庫状況をリアルタイムに把握し、期限切れや過剰在庫を抑制するとともに、必要なタイミングで適切に医療材料を補充できる体制を構築することが目的です。運用は病院スタッフが行う「自院運用」と、外部の事業者に委託する「外部委託」があります。
SPD業務(自院運用・外部委託いずれにも共通する業務フロー)の対応範囲は、病院内の物流全般に及びます。病院の規模や課題に応じて、以下の業務を自院内で運用するか、外部サービスとして委託するかを柔軟に選定できます。
SPDによって医療材料や医療機器の在庫を一元管理することで、重複発注や過剰在庫を未然に防げます。その結果、不要な購買コストが抑えられ、在庫回転率の改善や限られた保管スペースの有効活用にもつながります。
SPDの導入により、物品の受け取りや在庫確認などの業務が自動化・効率化され、医療スタッフは本来の診療やケアに集中しやすくなります。加えて、統一された管理ルールにより、担当者の交代や不在時でも安定した運用が可能になります。
滅菌・洗浄管理の標準化や有効期限の徹底管理により、医療の安全性が高まり、事故リスクの低減にも貢献します。さらに、消費データや使用実績をもとにした分析により、現場に即した改善策を継続的に実施できる仕組みが整います。
自院内でSPD業務を運用するメリットとしては、システム導入コストを比較的抑えられる点が挙げられます。既存の業務フローやスタッフ体制を活かしつつ導入できるため、大掛かりな外部投資を必要としません。
運用ノウハウが蓄積されることで、病院独自の管理ルールや改善ポイントを自前で最適化できるのも大きなメリットです。
デメリットは、専任担当者の確保や教育にかかるコストが発生する点です。
また、消耗品の使用量は手術や検査件数に応じて日々大きく変動するため、必要なスタッフ数を適切に配置しつつ、在庫補充計画やシフト管理を連動させなければなりません。この調整が難しく、業務量に合わせた人的・物的リソースを効率的に管理することが大きな課題となります。
SPDの外部サービスを利用するメリットは、物流専門業者が持つ高度なノウハウやシステムを即座に活用できる点です。医療スタッフは医療材料管理業務から解放され、本来の業務に集中できます。
サービス提供企業による継続的な改善提案やシステムアップデートが期待できる点も魅力です。
外部サービスの利用は、利用料や初期導入費用が発生するほか、病院と業者が在庫状況や消耗品使用量のリアルタイムデータを共有できる仕組みを構築する必要があります。この連携が十分に整っていないと、補充のタイミングがずれて欠品や過剰在庫が発生しやすくなるため、仕組み構築には運用負荷やコミュニケーションコストが伴います。
SPD業務では、現場改善を実現するために、整理整頓を徹底できる能力が求められます。医療材料の保管場所が明確になり、必要なものをすぐに取り出せるようになるほか、在庫の配置ミスを防ぎやすくなります。
日々の消費データを分析し、在庫量を最適化したうえでコスト削減に向けた具体的な改善提案を行うデータ分析能力も重要です。
院内にこういったスキルを持ったスタッフや育成する時間がない場合には、SPDを外部委託することがおすすめです。
ここでは、SPDサービス導入のよくある目的別に各事業者の強み、他社との違いやおすすめの病院をまとめました。